
プロジェクトのキックオフが終わったあと、こんな状況になっていないでしょうか。
- 会議はしたが、何をやるか曖昧
- メンバーの温度感がバラバラ
- 顧客から仕様変更が増えている
- 進捗が遅れているが、理由が説明できない
- 会議をしても状況がよくならない
プロジェクトマネジメントの本では、プロジェクトの進め方として、よく
- WBSを作る
- 進捗を管理する
- リスクを管理する
とよい、と、書いてあります。
しかし実際には、こう感じることが多いのではないでしょうか。
「そもそも、何を管理すればいいのか分からない」
キックオフがうまくいかなかったプロジェクトでは、
多くの場合、管理の問題ではなく「構想的な問題」が起きています。
この記事では、プロジェクトが崩れかけたときに有効な方法として
「プ譜(プロジェクト譜、プロジェクトの戦略譜面)」という考え方を紹介します。
1 キックオフ失敗プロジェクトの典型症状
キックオフに失敗したプロジェクトには、共通パターンがあります。
症状1 目的が曖昧
駄目な会議ではこんな言葉が飛び交います。
- とりあえず進めましょう
- まずは作ってみましょう
- 後で考えましょう
なにが駄目か →「どんな状態を狙いとするのか」が決まっていない。
症状2 役割が曖昧
メンバーは多いのに
- 誰が意思決定するのか
- 誰が顧客と交渉するのか
- 誰が責任を持つのか
が分からない。
なにが駄目か →「当事者意識」が芽生えていない。
症状3 会議だけ増える
以上から導かれるのは、たいてい、こんな状況です。
- 定例会議が増える
- 進捗確認が増える
- 報告資料が増える
しかし、これでは状況は改善しなません。
なぜなら、問題の構造が見えていないから・・・
2 なぜWBSでは立て直せないのか
こんなとき、往々にして、とにかく必死になって、
定例のたびに「WBSを作り直す」ということをやったりしますが
それでは事態の解決にはつながりません。
しかしWBSは作業を整理する道具であって
状況を理解する道具ではありません。
例えば炎上プロジェクトでは
- 顧客の期待がズレている
- メンバーの不満がある
- 技術的リスクがある
- 組織の政治がある
こうした要素が絡みます。
つまり問題は「作業」ではなく「状況」なのです。
3 プロジェクトを「ゲーム」に見立てると、よく見える
ここで役に立つのが「プ譜(プロジェクト譜、プロジェクトの戦略譜面)」です。
プ譜はプロジェクトを、ある種の「ゲーム」と見立てて、整理する方法ともいえます。
考える要素はシンプルです。
- 勝利条件(成功とは何か)
- プレイヤー(関係者)
- 状況(制約や課題)
- 打ち手(次に取る行動)
これらを一枚の図にまとめる手法です。

4 プ譜で考えると何が変わるか
例えば、炎上プロジェクトを整理するとこうなります。
獲得目標と勝利条件
獲得目標:いま、顧客とプロジェクトメンバーが本当に必要とするもの、当面、作るべきもの
勝利条件:なにがどうなりたいから、それを作るのか なにがどうなったら、成功と呼べるのか
状況
- 利害関係者
- 仕様変更が多い
- エンジニア疲弊
- 顧客不満
打ち手
- 顧客の要求整理
- 優先順位再定義
- スコープ調整
こうして整理すると、プロジェクトのなにが本質的な問題で、どう立て直していけばいいかのストーリーが見えてきます。
5 キックオフ失敗プロジェクトの立て直し手順
おすすめはこの3ステップです。
STEP1 勝利条件を書き直す
まずこのプロジェクトは成功すると何が起きるのかを定義する。
例
悪い例 「システムを作る」
良い例 「顧客が○○業務を半分の時間でできる」
STEP2 状況を書く
次に状況を整理します。
- ひと 顧客、上司、メンバー など 誰が何を期待していて、誰が何に困っているか
- お金 売上、目標利益、予算 など
- 時間 納期、工数、時間的余裕の有無 など
- クオリティ 目標としている品質、提供価値 など
- 商流・座組 顧客や外部ベンダなどとの契約関係
- 環境 属している業界や地域 など
- ライバル 売上や評価を「取り合う」存在
- 外敵 プロジェクトを「邪魔する」存在
STEP3 打ち手を書く
ここで初めて
- どんな行動を取るべきかと、その期日
- それにより、どんな状態を目指すのか
を考えます。
多くのプロジェクトがなぜうまくいかないのかというと、
この順序が逆になってしまっているのです。
いきなり成果物を設定し、それを分解し、直接的な開発タスクを書くだけ。
たとえば、以下の図のように。

どうなりたいかがわからない計画表現だと、
なんのためのそれをするのかが、読み取れない。
わからないから、迷いが生じます。
迷うから、不安になる。
不安だから、当事者になりたくなくなる。
みんなが逃げるから、物事が前に進まない。
それでも時間は過ぎていく。
スケジュールは、待ってはくれない――――
6 プ譜を書くと起きる変化
実際に書くと、多くのPMやSE、開発ディレクターの方がこう言います。
「問題が整理された」
「頭がスッキリした」
理由は単純です。頭の中の混乱を、収束させる道が見えるから。
例えば
- 顧客の要求が矛盾している
- 上司の期待が違う
- 技術的に難しい
など、その状況で真に向き合うべきテーマがはっきりします。
7 プロジェクトに悩んでいる人へ
プロジェクトがしんどいとき、多くの人はこう考えます。
- 自分はPMに向いていない
- 自分の能力が足りない
しかし多くの場合、状況が整理されていないだけで、整理ができたら、次のアクションが見えてきます。
整理するためのツールがプ譜です。
まとめ
キックオフに失敗したプロジェクトは管理ではなく構想を立て直す必要があります。
そのための方法がプ譜です。
ポイントは3つ。
1
獲得目標(何を作るか)と勝利条件(どうなったらいいか)を書く
2
状況を書く(有利、不利、制約、必達条件 など)
3
打ち手を書く
これをするだけで、プロジェクトの視野が、変わります。
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この記事の著者

プロジェクト進行支援家 後藤洋平
ものづくり、新規事業開発、組織開発、デジタル開発等、横断的な経験をもとに、何を・どこまで・どうやって実現するかが定めづらい、未知なる取り組みの進行手法を考える「プロジェクト工学」の構築に取り組んでいます。
プロジェクト能力開発やPM/PL人材不足問題の解決のために、日々、試行錯誤しながら、活動しています!
著書
・予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)
・紙1枚に書くだけでうまくいく プロジェクト進行の技術が身につく本(翔泳社)
・“プロジェクト会議”成功の技法 チームづくりから意思疎通・ファシリテーション・トラブル解決まで(翔泳社) 等
提供サービス実績
・現場リーダー層のプロジェクトマネジメント能力や業務課題の現状調査
・カスタマーサクセス、導入コンサルティングの組織、スキル要件整理、プロジェクト標準見直し
・PMO部門責任者の退任にともなう後任探し、引き継ぎのための業務棚卸し支援
・社員育成体系のリニューアルにともなう社内キーパーソンへのインタビュー、問題整理 等
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プロジェクトの悩みは、ひとりで悩んでいても、なかなか、解決は難しいものです。
利害関係やしがらみがないからこそ、差し上げられるヒントもあります。
ひとこと、お声がけいただければ、ご相談に乗らせていただきますので、お気軽にご連絡をいただけますと幸いです。
mail: info@gotolab.co.jp
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参考
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