「プロジェクト工学」とは

プロジェクト工学とは、当社代表の後藤が提唱している「前例のない取り組みの進め方」についての学問です。「プロジェクトはなぜ計画通りに進まないのか」という問題意識をテーマに、世の中のあらゆる社会的な活動を『プロジェクト』ととらえ、これをマネジメントの対象と考え、工学的なアプローチで解明し、より良いプロジェクト推進方法の確立を目指しています。


「工学的アプローチ」へのおもい

「観測ができること、記述ができること、制御ができること、この三要素を満たさなければ、工学たり得ない」これは、後藤の大学専門課程における恩師であり、ロボット工学の世界的権威である新井民生先生からいただいた教えの言葉です。

「工学部」と「理学部」の本質的な違いとは、その研究対象です。自然界の現象を解明することを目的とする理学に対して、工学は、その名の通り、人間が人工的に作る物、すなわち人工物を対象にします。二十世紀において、それは機械工学や電子工学など、産業における大量生産の学問、あるいは重電の世界など、物質的な生産技術を対象としてきましたが、情報革命の進行と現代の邪悪への反省は、現在、工学の対象を生産技術よりもさらに一歩メタな視点、「人工物を生み出す過程」「生み出された人工物と環境の間にある相互作用」に引き上げました。新たに「人工物工学」と名付けられたその潮流は、さらにその上流にある「人間はいかにして設計を行うか」を研究対象とする、設計学に端を発しています。
人工物工学は、その学問対象の必然から、姿かたちのある「物」にとどまらず、サービスや社会システムといった抽象的な人工物をその射程に収めることになりました。のみならず、設計そのもののプロセス自体の解明、またそれによる設計プロセスの高度化という新次元の工学へと歩を進めています。

プロジェクト工学、というコンセプトを(恐れ多くも)世に掲げたいと思った動機は、最終的に製品化された製造物やそれを用いたサービス提供のみならず、それらを創造し実装する過程としてのプロジェクトもまた、人工物であるに違いない、という考えでした。

参照領域

上述したとおり、プロジェクト工学は、その源流は工学、なかでも設計学にあります。学生であった当時は、あまり褒められた学生でなく、不肖の門下生でしたが、卒業後、いついかなる局面にあっても、その精神は常にともにあったと自負しています。
そのうえで、テーマを「プロジェクト」と定めたことから、受け継ぐべき理論体系は工学の外にも広く求めることが必然的帰結となり、数多くの学問分野を参照しながら理論構築を行ってきました。例えば人間の考えを表現する認知言語学、創造的思考の仕組みの理論であるアナロジーやアブダクションを扱う認知心理学。あるいは数多くの事例と理論を練磨してきた体系としての軍学。そして、人間の心に対してアプローチすることを考えると、仏教哲学の分野で達成されてきた叡智を無視しないわけにはいきません。
先人の達成に畏敬の念を忘れず、かつ、創造的に受け継ぐ姿勢を持ち、理論づくりを行っています。

メディア掲載情報

様々なメディアにおいて、プロジェクトの進め方について語っています。

専門家に聞く!インタビュー | アスクル みんなの仕事場

PM初心者のための、プロジェクトマネジメント3ステップ | Workship Magagine

プロジェクト工学のアプローチで探る「計画が計画通りに進まない理由」 | ビジネス+IT

ニューノーマルにおけるプロジェクトマネジメントとは?|SEカレッジ ウェビナーレポート

“最大の効果を出すチーム”は、管理ではなく会話でつくられる | アドタイ

プロジェクト工学の来し方行く末

黎明期

具体的にプロジェクト工学という発想を世に問うことができたのは、2017年4月のことでした。前田考歩氏との共同開催で実施した「docomoイノベーションビレッジ」にて、プロジェクトの表記法である「プロジェクト譜(プ譜)」の初期コンセプトを共同考案、発表し、数多くの方から関心をいただくこととなりました。

その後、出版社である宣伝会議社からのオファーを受け、2018年3月に「予定通り進まないプロジェクトの進め方を上梓」。
2020年3月にはその続編である「見通し不安なプロジェクトの切り拓き方」、同4月には翔泳社から「紙一枚に書くだけでうまくいくプロジェクト進行の技術が身につく本」を刊行することとなりました(上記はすべて前田氏との共著)。

現在発表済みのふたつのモデル

プ譜

プロジェクト工学という構想を具体的なフレームワークとして実装することを可能にした、第一のモデル。(前田考歩氏との共同考案)

成果物を起点にして、それを実現するために人間の作業を管理するのが一般的に「プロジェクト管理」と呼ばれる手法ですが、プ譜は切り口を変えて、「進め方」を表現するというアプローチをとっています。また、未知の環境のなかで進行するプロジェクトは、一度掲げた目標やマイルストーンが、予想外の事象から修正を余儀なくされることが通常ですが、そのような時系列的な変化を記録しやすいことも配慮しています。

特別な勉強や難しい理論はさておき、誰でも簡単に、進める上で具体的に実行したいこと、大切にしたいことを表現することができるので、書きやすく、読みやすい表現方法です。プロジェクトを実行する主体者が自分の頭の中を整理するだけでなく、一緒にすすめるメンバーや外部の利害関係者と意思疎通し、合意形成をはかることにも有効です。


薪ストーブサイクル

書籍「見通し不安なプロジェクトの切り拓き方」にて発表した、第二のモデル。

なぜか、世の中には、炎上したり停滞したり、人を疲弊させるようなプロジェクトもあれば、関わること自体が面白く楽しく、仕事が仕事じゃないような、遊びと区別がつきづらいような、あるいはいわゆる「フロー」状態をもたらしてくれるかのような、そんなプロジェクトもあります。
両者の区別をつける根本的な原因とはなんだろうか?という疑問を考えるために、このモデルを考えました。

人間が環境や対象に関わりを持ち、影響を及ぼすことなしに、プロジェクトは、前進することはありません。実行主体者と実行対象の間にある相互作用についての洞察をすることなくしては、この疑問に答えることは不可能だと考えます。そして、いまのところ、その解は、「課題」と「心」が結びつく、という一点に収斂すると考えています。

 

広がりゆくプロジェクト工学の世界

プロジェクト工学として研究、研鑽を重ねた内容を社会にコンテンツとして提供する拠点として、ゴトーラボは2019年5月10日に設立されました。以来、主に企業向けに研修、ワークショップ、あるいは伴走等の形で実践と価値提供を行っています。

またそうしたなかで、プ譜については、多くの方からの期待を受けて、これをウェブ上で作成・共有することができるSaaSである「キックプ譜」を開発、2021年1月にリリースしています。

今後の展開に向けては、同4月には新たなフレームワークとして考案した「ミーティング地図」を先行リリースいたしました。現在、エンジニア向けビジネススクールであるSEカレッジにて提供を開始していますが、より広い価値提供の機会を積極的に模索しています。