
プロジェクトはなぜ失敗するのか
多くのプロジェクトは、計画段階では合理的に見えても、実行段階で予想外の問題に直面します。
特に以下のような状況では失敗確率が高くなるものです。
- 部署横断プロジェクト
- 新規事業
- DX推進
- 組織変革
- 不確実性の高い技術開発
このようなプロジェクトでは、
「正しい計画を立てたつもりでも、結果は運次第」
という状況が起こりやすい、と、一般に考えられています。
その問題の根本には
プロジェクトの設計品質を客観的に評価できない
という現実があります。
2. 従来のプロジェクト評価の限界
一般的なプロジェクト計画の評価は次のような方法に依存しています。
- 上司の経験
- レビュー会議
- フレームワーク(PMBOKなど)
- 過去事例
しかしこれらは基本的に、どこまでいっても、主観評価でしかありません。
- 計画が論理的か
- 想定リスクが十分か
- アクションが具体的か
といった点は、レビューする人の経験に依存してしまいます。
結果として
- 良い計画でも過小評価される
- 不十分な計画でも通ってしまう
という問題が起きてしまいます。
3. プロジェクトの「不確実性」を数値化するという発想
ここで登場するのが
Project Entropy Score(プロジェクト・エントロピー・スコア)
という考え方です。
これは
- プロジェクトの成功確率
- プロジェクトの不確実性
を AIで定量評価する指標です。

プロジェクトの構想(現状・アクション・目標)を入力すると、
- 将来の局面分岐
- 各パターンの確率
を推定し、エントロピー(不確実性)を計算します。
この発想は情報理論のシャノンエントロピーに基づいています。
これは、簡単に言うと、未来がどれだけバラバラに分岐するかを測る指標です。

4. Project Entropy Scoreが示す4つの状態
Project Entropy Scoreでは、思考の質を次の4段階で捉えます。

① 思考の負荷も成功確率も低い
浅い検討のプロジェクト
例:「とりあえずDXする」
② 思考負荷は高いが成功確率が上がらない
分析は多いが戦略が弱い
例:「大量の資料はあるが意思決定が曖昧」
③ 思考負荷が成功確率に寄与する
検討が実際に成功確率を上げている
例:「問題を多角的に分析し、将来シナリオを幅広く想定し、ベストな一手を選択する」
④ 軽い思考でも成功確率が高い
構造が非常に良いプロジェクト
例:「過去の豊富な経験から、最初に倒すべきセンターピンが手に取るようにわかる」
このように
思考の質
を評価するのが特徴です。
5. なぜこの指標が面白いのか
Project Entropy Scoreが面白いのは
プロジェクトを「情報構造」として扱うことにあります。
つまり、従来の
- タスク構造
- スケジュール設計
ではなく、意思決定の構造を評価しています。
これは次の分野と相性がよいと考えられます。
- 新規事業
- 研究開発
- スタートアップ
- 組織変革
- プロダクト戦略
いずれも未来の不確実性が高い領域です。
6. AI時代のプロジェクトマネジメント
AIが普及すると、計画作成のコストは急激に下がる一方で、計画の質の差は、大きくなります。
そのとき重要になるのは
- 計画を書く能力 ではなく
- 計画を評価する能力
となります。
Project Entropy Scoreのような指標は
プロジェクト思考を定量的に評価する試みと言えます。
7. まとめ
プロジェクトマネジメントは長い間
- 経験
- 勘
- 事例
に依存してきました。
しかし、Project Entropy Scoreの概念は
- プロジェクトの成功確率
- 不確実性
- 思考の質
を数値として可視化する可能性を示しています。
もしこのアプローチが広まれば、プロジェクト設計はアートからサイエンスへ近づくかもしれません。
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この記事の著者

プロジェクト進行支援家 後藤洋平
ものづくり、新規事業開発、組織開発、デジタル開発等、横断的な経験をもとに、何を・どこまで・どうやって実現するかが定めづらい、未知なる取り組みの進行手法を考える「プロジェクト工学」の構築に取り組んでいます。
プロジェクト能力開発やPM/PL人材不足問題の解決のために、日々、試行錯誤しながら、活動しています!
著書
・予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)
・紙1枚に書くだけでうまくいく プロジェクト進行の技術が身につく本(翔泳社)
・“プロジェクト会議”成功の技法 チームづくりから意思疎通・ファシリテーション・トラブル解決まで(翔泳社) 等
提供サービス実績
・現場リーダー層のプロジェクトマネジメント能力や業務課題の現状調査
・カスタマーサクセス、導入コンサルティングの組織、スキル要件整理、プロジェクト標準見直し
・PMO部門責任者の退任にともなう後任探し、引き継ぎのための業務棚卸し支援
・社員育成体系のリニューアルにともなう社内キーパーソンへのインタビュー、問題整理 等
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