
1. 不確実性の高い意思決定はなぜ難しいのか
ビジネスの意思決定には大きく2種類あります。
① 確実性が高い意思決定
例
- 業務改善
- コスト削減
- 既存事業の最適化
こうしたものは、過去データや事例が多いため比較的判断しやすいといえます。
② 不確実性が高い意思決定
例
- 新規事業
- 新技術導入
- 市場戦略
- 組織変革
これらの場合は、目標設定の自由度が高く、未来の予測が困難であるため、そもそも正解が存在しません。
2. 多くの意思決定フレームワークの限界
意思決定を支援するフレームワークは数多く存在します。
- SWOT分析
- OODAループ
- PDCA
- 意思決定マトリクス など
これらは思考を整理する上で有効ですが、一つ大きな問題があります。
それは将来起きうる状況の「分岐」を評価できないという点です。

- 分析が十分なのか
- リスク想定が妥当なのか
- 成功確率がどれくらいなのか
こうした点の評価は多くの場合、経験や直感に依存しています。
主観的には良い選択をしているつもりでも、客観的には筋の悪い手を指してしまっていることは、よくあります。そして、筋の悪いてを指し続けると、将来の選択肢を狭め、最終的には行き詰まりを迎えてしまいます。

3. 不確実性を数値化するという発想
不確実性の高い意思決定では「どの選択が正しいか」よりも
「どれくらい不確実なのか」を理解することが重要になります。
ここで参考になるのが情報理論の考え方です。
情報理論では、不確実性の大きさをエントロピーという指標で表します。
エントロピーが高いほど
- 未来の分岐が多い
- 予測が難しい
ことを意味します。
逆にエントロピーが低い場合、未来の結果はある程度予測しやすい、と考えます。
4. プロジェクトの不確実性を評価する「Project Entropy Score」
この考え方をプロジェクト評価に応用したのがProject Entropy Score です。
Project Entropy Scoreでは、プロジェクトの構想をもとに
- 将来起こりうる局面分岐
- それぞれの確率
を推定し、プロジェクトの不確実性を数値化します。

つまり、従来の
- 計画の量
- 分析の量
ではなく、意思決定構造の質を評価するアプローチです。
5. なぜ不確実性の評価が重要なのか
不確実性を理解することで、意思決定は大きく変わります。
例えば、エントロピーが高いプロジェクトの場合
- 追加検証を行う
- スコープを小さくする
- 段階的に進める
といった選択肢を取る発想が出てきます。
一方、エントロピーが低いプロジェクトであれば
- 迅速に実行する
- リソースを集中する
という判断ができます。
つまり不確実性の大きさに応じて戦略を変えることができるようになります。
6. AI時代の意思決定
近年、AIの進化により
- データ分析
- シミュレーション
- 意思決定支援
の領域は大きく変化しています。
特に複雑な意思決定構造の分析は人間だけでは難しい。
そのため
- プロジェクト評価
- 戦略分析
- リスク評価
といった領域ではAIによる意思決定支援が重要になっていくと考えられます。
7. まとめ
不確実性の高い意思決定では
- フレームワークだけでは不十分
- 分析量だけでも不十分
です。
重要なのは意思決定の構造そのものを評価することです。
Project Entropy Scoreの考え方は、
- プロジェクトの成功確率
- 不確実性
- 思考の質
を可視化する試みといえます。
こうした指標を普及させることで、意思決定は経験や勘に依存するものから、より分析的なプロセスへと進化させることが可能です。
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この記事の著者

プロジェクト進行支援家 後藤洋平
ものづくり、新規事業開発、組織開発、デジタル開発等、横断的な経験をもとに、何を・どこまで・どうやって実現するかが定めづらい、未知なる取り組みの進行手法を考える「プロジェクト工学」の構築に取り組んでいます。
プロジェクト能力開発やPM/PL人材不足問題の解決のために、日々、試行錯誤しながら、活動しています!
著書
・予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)
・紙1枚に書くだけでうまくいく プロジェクト進行の技術が身につく本(翔泳社)
・“プロジェクト会議”成功の技法 チームづくりから意思疎通・ファシリテーション・トラブル解決まで(翔泳社) 等
提供サービス実績
・現場リーダー層のプロジェクトマネジメント能力や業務課題の現状調査
・カスタマーサクセス、導入コンサルティングの組織、スキル要件整理、プロジェクト標準見直し
・PMO部門責任者の退任にともなう後任探し、引き継ぎのための業務棚卸し支援
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