プロジェクトの疲弊を癒すアプローチの体系

複雑化したプロジェクトでは、精神的な疲弊が起きる。

この疲弊という問題に対処したいと考えるとき、たとえば心療内科医や臨床心理士など、国家資格に基づく標準診療として提供されるサービスがある。あるいは民間資格の枠組みで、職業的な援助者として想起されるものとして、カウンセラー、セラピスト、コーチ、メンター、コンサルタントなど、様々な職業名が存在し、現代社会における一大産業を形成している。
問題を抱えていると自認した人は、なにかしらの情報を探索し、きっとこのサービスが必要だと確信してその門を敲く。あるいは所属する企業や家族がサービスを探し、引き合わせてくれることもある。いずれの場合も、本人の見立てとサービスが必ずマッチングするかというと、不確実である。

それらのサービスには必ず学術的な源流がある。本稿では、それらの源流を、いくつかの文脈のなかで系統づけることを試みる。

(前史)医学・哲学・数学・思想的源流

ジャン=マルタン・シャルコー 1825-1893 神経学・神経内科医
コンセプト:「目に見える臨床症状」と「死後の解剖学的病変」を結びつける「解剖臨床相関」
キーワード:解剖臨床相関、ヒステリーの科学的アプローチ、催眠の医療応用

ニーチェ 1844-1900 哲学
コンセプト:人間は虚無を乗り越え自ら価値を創造する存在だ
キーワード:力への意志、超人、永劫回帰、運命愛

アンリ・ポアンカレ 1854-1912 数学・物理学
コンセプト:「規約主義(コンベンショナリズム)」 と、「関係性の科学観」
キーワード:トポロジー、位相幾何学、ポアンカレ予想、カオス理論の起源、三体問題

フェルディナン・ド・ソシュール 1857-1913 言語学
コンセプト:言語は全体が互いに関係し合う「記号のシステム(体系)」 である
キーワード:ラングと パロール、シニフィアン と シニフィエ、記号の恣意性、差異、共時態 と 通時態

鈴木大拙 1870-1966 仏教哲学
コンセプト:禅は東洋の精神を世界に伝える窓になる
キーワード:ZEN、霊性(スピリチュアリティ)、即非の論理、大智と大悲

マイケル・ポランニー 1891-1976 物理化学者・社会科学者・科学哲学者
コンセプト:人間は、言葉にできること以上のことを知っている
キーワード:暗黙知、層の理論、創発、境界条件と境界制御、諸細目の統合と包括的全体

ジャン=ポール・サルトル 1905-1980 実存主義
コンセプト:人間はまず存在し、後から自ら生き方を決める
キーワード:実存は本質に先立つ、自由の刑、アンガージュマン

メルロ=ポンティ 1908-1961 現象学
コンセプト:人間は身体を通じて世界と分かちがたく結びついている
キーワード:身体論、世界内存在、実存と構造の中間

クロード・レヴィ=ストロース 1908-2009 文化人類学
コンセプト:あらゆる文化の親族・神話には共通の普遍的構造がある
キーワード:構造主義、親族の基本構造、西洋中心主義批判

井筒俊彦 1914-1993 東洋哲学・言語学
コンセプト:東洋のあらゆる思想の根底には共通の深層構造がある
キーワード:東洋思想の構造主義化、イスラーム思想、比較言語学

ミシェル・フーコー 1926-1984 哲学・思想史
コンセプト:時代ごとに人間を支配する無意識の知の枠組みが変わる
キーワード:エピステーメー、権力構造、人間の終焉

I. 精神分析の系譜

ジークムント・フロイト 1856-1939 精神分析学

シャルコーに師事したが、「視覚的・神経学的アプローチ」から対話を通じて心の奥底を探る「聴覚的・心理的アプローチ」へと発展させた 耐えられない苦痛、不快な記憶、受け入れがたい欲望などを、無意識の領域に押し込めて意識から遠ざける心の防衛機制の中心的な働きとして「抑圧」を論じた 当初はいわゆる「誘惑理論」で、ヒステリーの原因を幼少期の性的トラウマに求めていたが、1897年、この理論を放棄し、実際の外傷体験よりも無意識の欲動・空想(エディプス的葛藤など)を中心に据える精神分析へと方向転換した

コンセプト:無意識の欲動と抑圧が人格と症状を形作る
キーワード:抑圧、リビドー、エス・自我・超自我、エディプス葛藤

アンナ・フロイト 1895-1982 児童精神分析・自我心理学

父の「精神分析」の正統な後継者として、その理論を「子どもの心理」と「自己防衛のメカニズム」へと発展させた
子どもの遊び、絵、日常生活の行動を注意深く観察することで、その無意識や葛藤を読み解く手法を確立した

「防衛機制(Defense Mechanisms)」の体系化
父フロイトが発見した、嫌な現実や感情から心を守る「防衛(抑圧など)」の仕組み
攻撃者との同一視:いじめられた子どもが、別の弱い子をいじめるようになる心理
退行:弟や妹が生まれると、赤ちゃん返りをして親の関心を引こうとする心理
昇華:満たされない欲求を、芸術やスポーツなどの社会的に価値のあるものへ昇華する心理
のちにルイス、トムキンス、カウフマンらの「社会に適応するための自我心理学」の大元となる心理学のフレームワークとなった

「自我心理学(Ego Psychology)」の確立
本能と現実の板挟みになりながら必死にバランスを取ろうとする「自我(エゴ)」の適応力に光を当てた
この「社会や環境に適応していく自我の力」を重視する視点が、のちにエリクソンの「心理社会的発達理論」へと実を結ぶ

コンセプト:自我は本能と現実の板挟みの中でバランスを取ろうとする
キーワード:防衛機制、自我心理学、児童分析

エリク・エリクソン 1902-1994 発達心理学 ・発達段階論

アンナ・フロイトに師事した正統派の精神分析家 「アイデンティティ(私は私であるという確信)」の概念の提唱者
フロイトの精神分析の系譜を受け継ぎながら、それを人間の「生涯にわたる成長のプロセス」へと拡張した
人生を8つの発達段階に分け、それぞれの時期に乗り越えるべき「心理社会的危機(葛藤)」があると考えた

乳児期(0-1歳): 基本的信頼対不信。養育者への信頼感の獲得
幼児前期(1-3歳): 自律性対恥・疑惑。排泄の自立など主体性の芽生え
幼児後期(3-6歳): 積極性対罪悪感。目的意識を持って行動する時期
学童期(6-12歳): 勤勉性対劣等感。学習やスポーツへの挑戦
青年期(12-18歳): アイデンティティ対アイデンティティ拡散。「自分らしさ」の確立
成人前期(18-40歳): 親密性対孤立。他者と深いつながりを築く
成人期・壮年期(40-65歳): 世代性対停滞。次世代の育成や社会貢献
老年期(65歳以降): 自我の統合対絶望。人生の肯定と受容。

人生の極めて早い段階(1〜3歳頃)に「恥」という感情が個人のパーソナリティ(人格)の土台として組み込まれる
この時期の養育者の関わり方が子どもの自律性の感覚、あるいはshameと疑惑の感覚を大きく左右する
青年期にアイデンティティの確立に失敗すると、人は強烈な自己不信や「恥」の感覚に苛まれる

コンセプト:人格は生涯にわたる8段階の心理社会的危機を通じて形成される
キーワード:発達段階論、自律性対恥・疑惑、アイデンティティ

メラニー・クライン 1882-1960 対象関係論

「対象関係論」の創始と赤ちゃんの精神世界の解明
アンナ・フロイトの最大のライバルであり、もう一人の直系の天才女性分析家(二人の「児童分析論争」は歴史的に有名)
フロイトの理論をさらに遡り、「生後数ヶ月の赤ちゃんの心の世界」を分析した
人間は生まれた瞬間から母親(の乳房など)という「対象」との関係を通じて心を形成していく
現代のカウンセリングに大きな影響を与えた

コンセプト:心は生後まもなくから他者(対象)との関係を通じて形成される
キーワード:対象関係論、乳児の精神世界、児童分析論争

ハインツ・コフート 1913-1981 自己心理学(Self Psychology)

20世紀後半のアメリカ精神分析界のリーダー
フロイトは「自己愛(自分が大好き)」を幼稚で克服すべきものと捉えていたが
コフートは「健康な自己愛こそが人間の自尊心の土台になる」と反論した
他者から「褒められ、認められること(鏡映)」が人間にとって一生不可欠であるとする
現代の「自己愛パーソナリティ障害」や「インナーチャイルド」の治療の基盤となった

コンセプト:健康な自己愛こそ自尊心の土台だ
キーワード:自己心理学、鏡映、自己愛パーソナリティ障害

ジャック・ラカン 1901-1981 精神分析・構造主義

フランスの精神分析家であり、20世紀の哲学・思想界を揺るがした巨人 
「フロイトに還れ」の提唱 現代思想(構造主義)への昇華
アメリカで主流になっていた「社会に適応するための自我心理学」を「フロイトの精神を歪めている」と激しく批判
「フロイトに還れ」というスローガンを掲げた
精神分析を医学の枠から脱皮させ、現代のカルチャーや哲学に決定的なパラダイムシフトをもたらした

コンセプト:無意識は言語のように構造化されている
キーワード:フロイトに還れ、シニフィアン、現代思想への昇華

II. トラウマ学・Shame理論・PTSDの系譜

ヘルマン・オッペンハイム 1858-1919 神経学

鉄道事故に遭遇した患者の易刺激性や頭痛・知覚過敏などの諸症状を明確に脳神経系の器質的変化から生じるものとし、1889年、はじめて「外傷性神経症(traumatische Neurose)」という診断名を提唱した

コンセプト:外傷後の神経症状は、脳神経系の器質的な微細病変から生じる身体的疾患だ
キーワード:外傷性神経症、鉄道事故、器質論、シャルコーとの対立

ピエール・ジャネ 1859-1947 精神病理学・解離論

心がバラバラに分裂する現象(意識の解離)を発見
心の病気の原因をすべて「性的なトラウマ」に結びつけようとするフロイトの意見に、ジャネは激しく反対した
「心理的エネルギー(精神力)」と「心理的緊張(それをまとめる力)」のバランスが崩れると神経症になると考えた

コンセプト:心は圧倒的な体験によってバラバラに分裂しうる
キーワード:解離、多重人格、心理的エネルギーと緊張のバランス

アブラム・カーディナー 1891-1981 精神分析学・精神医学・文化人類学

ニューヨーク生まれ、1921年にウィーンへ渡りフロイトの教育分析を受け、その後帰国、ブロンクス区の復員軍人病院で戦争神経症患者を3年間診察
戦争神経症の中で、トラウマを防ごうとする防衛的な機制自体が、時に個人の適応能力を破壊してしまうことに気づいた
つまり戦争神経症は葛藤による疾患ではなく、適応の失敗の結果であると結論づけ、この結論によってトラウマ性神経症の概念を精神分析理論の中に再導入した

コンセプト:戦争神経症は葛藤ではなく、適応能力そのものの破綻(適応不全)である
キーワード:戦争神経症、PTSD概念の先駆、文化とパーソナリティ論

シルヴァン・トムキンス 1911-1991 感情理論(Affect Theory)

「顔の表情と感情のつながり」に着目し、現代の感情心理学のベースを構築
「表情フィードバック仮説(笑うから楽しくなる)」、「基本情動理論」等を提唱
「恥(Shame – Humiliation)の理論」は、彼の情動理論における最も核心的かつ独創的な部分
恥は「興味」や「喜び」といったポジティブな感情が湧いている最中に、それが不意に遮断されたときに発生する
恥は「相手とつながりたい(あるいは関心を持ち続けたい)のに、それが阻まれてしまった」というジレンマのサイン

コンセプト:感情(affect)は学習でなく生得的な生物学的プログラムだ
キーワード:情動理論、恥-屈辱、表情フィードバック仮説

ヘレン・ブロック・ルイス 1913-1987 精神分析・臨床研究

実際のカウンセリングの会話記録(200セッション以上)を緻密に分析
患者の苦しみの根底には罪悪感よりも「恥」の方が圧倒的に多く隠れているとした
「未承認の恥」恥はあまりにも苦痛な感情であるため、自身も気づかないうちに別の感情(怒りや鬱、強迫観念)へとすり替わる

コンセプト:症状の根底には罪悪感より恥が隠れている
キーワード:未承認の恥、神経症、臨床記録の緻密な分析

ドナルド・ネイサンソン 1931-2017 感情理論・精神医学

トムキンスの「情動理論(Affect Theory)」を継承・発展させた
人間心理における「恥(shame)」と「誇り(pride)」のメカニズムを解明
「恥のコンパス」 人が「恥」の情動を感じたとき、無意識に取る4つの防衛反応を体系化
(引きこもり、自己攻撃、回避、他者攻撃)

コンセプト:恥への対処は4つの防衛パターン(コンパス)に類型化できる
キーワード:恥のコンパス、誇りと恥、トムキンス理論の継承

トマス・シェフ 1929-2025 社会学

「恥とは、人と人との繋がり(社会的絆)が脅かされたときに鳴るアラームである」と定義
恥を「社会を統合し、あるいは崩壊させる最大の原動力(主要な社会的感情)」として捉えた
誇り(Pride)は確固たる社会的絆の感情的現れであり、恥(Shame)は社会的絆が脅かされているときの感情的現れ
「恥は最も強力でありながら、最も隠蔽されている感情である」
「恥が適切に処理されないと、果てしない社会的紛争や暴力(破壊的な怒り)に化ける」

コンセプト:恥は社会的絆の状態を告げるアラームだ
キーワード:社会的絆、誇りと恥、社会学的shame理論

ガーシェン・カウフマン 1943- 臨床心理学

トムキンスの「情動理論」と、精神分析の「対象関係論」(人と人との結びつきを重視する学派)を融合
「恥の臨床理論」恥が恐ろしいのは「自己増殖するループ」に陥るからだと説明
以下の問題はすべて「恥」が根底にあるとした

強迫症・完璧主義:二度と恥をかかないように、すべてを完璧にコントロールしようとする防衛
うつ病・無気力:内的スパイラルによって自尊心が完全に破壊し尽くされた状態
依存症(アルコール・買い物など):恥の激しい苦痛から脳を一時的に麻痺させ、逃避するための手段
摂食障害・性的機能不全:自分の身体や性に対する強烈な「恥」の感覚の現れ

コンセプト:恥は自己増殖するループとしてあらゆる病理の根底にある
キーワード:恥の臨床理論、対象関係論との融合、依存症・強迫

アラン・N・ショア 1943- 対人神経生物学

恥の正体は「副交感神経の急ブレーキ」であるとした
幼児が何かを発見して「見て!」と大興奮しているとき、脳(右脳)からはドーパミンが溢れ、交感神経が急激に活性化
養育者から「静かにしなさい!」と拒絶や禁止のサインを出された瞬間、高まっていたエネルギーの行き場がなくなる
このとき脳は、エネルギーを強制終了させるために副交感神経を異常なまでに急作動(急ブレーキ)させる
血圧が下がり、顔が赤くなり、全身から力が抜けてうつむく「恥」の身体虚脱状態(低覚醒状態)が引き起こされる
健全な愛着関係:
「相互調整」 恥(虚脱状態)になっても、直後に「ごめんね」とフォローされれば、神経系は安全に元の状態へと回復する
「未修復の恥」が繰り返されると、ストレスを処理する脳の神経回路(右眼窩前頭皮質など)が物理的に萎縮・損傷

コンセプト:恥は副交感神経の急ブレーキという身体反応だ
キーワード:対人神経生物学、右脳、相互調整、未修復の恥

ブレネー・ブラウン 1965- 社会福祉学・shame研究

「恥(Shame)」の研究を、21世紀の現代社会に向けて爆発的に普及させた人
2010年「脆弱性の力(The Power of Vulnerability)」は世界で最も視聴されたTED動画の一つ

恥を「自分は欠陥のある人間で、他者から愛され、受け入れられる価値がないという、激しく苦痛な感覚・経験」と定義した
ヘレン・ルイスが提唱した違いを、さらに分かりやすく整理
罪悪感:「私は悪いことをした(I did something bad)」(行動への後悔 → 修復可能)
恥:「私は悪い人間だ(I am bad)」(自己の否定 → 孤立と破壊を生む)

恥の防衛反応(鎧)を脱ぎ捨てるためのキーワードとして「脆弱性(傷つきやすさ/弱さを受け入れること)」を提示した
恥を完全に消し去ることは不可能だが、恥に強くなる回路(レジリエンス)は育てられると主張した

コンセプト:関係性が人生に意味と目的を与える
キーワード:脆弱性の力、罪悪感と恥の区別、レジリエンス

スティーブン・ポージェス 1945- 神経生理学

1994「ポリヴェーガル理論」発表
従来の医学 自律神経は「交感神経(闘争・逃走)」と「副交感神経(休息)」の2つでアクセルとブレーキのようにバランスを取っていると考えられていたが哺乳類の進化の過程で副交感神経(迷走神経)がさらに2つに枝分かれしたことを突き止め、自律神経を以下の「3つの階層」で再定義した

腹側迷走神経系(社会的エンゲージメントシステム):【最も新しい進化】
状態:安心・安全を感じているとき
働き:心拍数を穏やかに保ち、顔の表情を豊かにし、人の声を聞き取りやすくする、社会的絆、リラックス
交感神経系(闘争・逃走反応):【中間に進化したシステム】
状態:危機や脅威を感じたとき
働き:心拍数と血圧を上げ、敵と「戦う(Fight)」か「逃げる(Flight)」かのエネルギーを爆発させる。
背側迷走神経系(凍りつき・シャットダウン):【最も原始的なシステム(爬虫類から継承)】
状態:圧倒的な恐怖、戦うことも逃げることもできない絶望的な危機
働き:心拍数や血圧を急激に低下させ、体を「死んだふり」「虚脱(崩壊)」の状態にする

コンセプト:自律神経は安全・危険の程度に応じ3階層で反応を切り替える
キーワード:ポリヴェーガル理論、社会的エンゲージメントシステム、ニューロセプション

リチャード・シュワルツ 1949- 家族療法・パーツ心理学

1980年代にIFS(Internal Family Systems:パーツ心理学/学際的家族システム)を創始
「私たちの心は、複数の人格(パーツ)が集まった一つの家族である」という視点でアプローチした

エグザイル(追放された者):幼少期に強烈な傷つきや「恥」、恐怖、拒絶を経験し、心の奥底に閉じ込められたパーツ。強烈な痛みを伴うため、他のパーツによって「追放」されている
マネージャー(管理者):二度とエグザイルが傷つかないよう(二度と恥をかかないよう)、日常を完璧にコントロールしようとする防衛パーツ。完璧主義、批判、過度な準備などを担う
ファイアファイター(消火戦術員):防衛が破れ、エグザイルの「恥」や痛みが溢れ出しそうになったとき、それを麻痺させるために緊急出動するパーツ。暴飲暴食、自傷行為、依存症、激しい怒りなどで心の火を消そうとする
セルフ(Self:真の自己):どのパーツでもない、私たちの本質。生まれつき誰もが持っている「穏やかさ、好奇心、思いやり、つながり」に満ちたリーダーシップの源

IFSのゴールは、パーツを排除することではなく、「セルフ」が傷ついたパーツ(エグザイル)を優しく抱きしめ、家族(システム)を調和させることにある

コンセプト:心は複数のパーツからなる一つの家族だ
キーワード:IFS、エグザイル、マネージャー、ファイアファイター、セルフ

III. 分析心理学・ユングの系譜

ユング 1875-1961 分析心理学
コンセプト:トラウマの苦しみは本来の自己への回帰を促すメッセージだ
キーワード:集合的無意識、元型、自己実現(個性化)、コンプレックス

ドラ・カルフ 1904-1990 分析心理学・箱庭療法
コンセプト:無意識のイメージは砂箱の中で言葉なしに表現・変容しうる
キーワード:箱庭療法、ローエンフェルド、ユングの自己理論の技法化

ジェームズ・ヒルマン 1926-2011 元型心理学(Archetypal Psychology)
コンセプト:心は統合すべきものでなく、多様な神々(病みも含め)がそのまま息づく場だ
キーワード:元型心理学、ユング派からの独立、影の肯定

河合隼雄 1928-2007 臨床心理学・分析心理学(日本)
コンセプト:言葉にならない無意識は箱庭のような非言語表現を通じて語られる
キーワード:箱庭療法の日本導入、日本人初のユング派分析家、狐憑き・生霊、神話研究

キャサリン・クック・ブリッグス 1875-1968 性格類型論
コンセプト:ユングの心理学理論をもとに性格を類型化できる
キーワード:MBTIの原型、ユング理論の応用

イザベル・ブリッグス・マイヤーズ 1897-1980 性格類型論・心理測定
コンセプト:性格類型は質問紙によって実用的に測定できる
キーワード:MBTI開発、質問紙作成、母の理論の実装

大沢武志 1935-2012 経営心理学(日本)
コンセプト:自己実現を目指す人間観をそのまま企業経営に持ち込む
キーワード:心理学的経営、SPI開発、MBTI日本導入、リクルート

IV. アドラー系(個人心理学・コーチング)

アドラー 1870-1937 個人心理学
コンセプト:人は過去の原因でなく未来の目的に向かって生きる
キーワード:目的論、勇気づけ、共同体感覚、課題の分離

ヴィクトール・フランクル 1905-1997 実存分析・ロゴセラピー
コンセプト:人間にとって最上の動機は意味への意志だ
キーワード:ロゴセラピー、意味への意志、アドラーからの破門

野田俊作 1948-2020 アドラー心理学(日本)
コンセプト:シカゴ仕込みの本格的アドラー心理学を日本のカウンセリング実践に導入する
キーワード:ドライカース系研究所、カウンセラー養成、日本アドラー心理学会

岸見一郎 1956- アドラー心理学(日本)
コンセプト:アドラーの原典をギリシャ哲学の視点から読み直す
キーワード:『嫌われる勇気』、原典翻訳、野田俊作門下

アブラハム・マズロー 1908-1970 人間性心理学
コンセプト:人間の欲求は低次から高次へ階層的に生じ、自己実現を頂点とする
キーワード:欲求5段階説、自己実現、人間性心理学(第三勢力)

カール・ロジャーズ 1902-1987 人間性心理学・カウンセリング
コンセプト:人は誰でも自己治癒力を本来的に備えている
キーワード:来談者中心療法、共感的理解、無条件の肯定的関心、自己一致

V. 行動療法・CBTの系譜

ジョン・B・ワトソン 1878-1958 行動主義心理学
コンセプト:心理学は観察可能な行動だけを研究対象とすべきだ
キーワード:行動主義、客観的観察

イワン・パブロフ 1849-1936 生理学・条件反射学
コンセプト:中立刺激は繰り返しの対提示によって反応を引き起こす力を獲得する
キーワード:古典的条件づけ、パブロフの犬

ジョセフ・ウォルピ 1904-1990 行動療法
コンセプト:不安とリラックスは同時に感じられないという生理を利用し不安を上書きできる
キーワード:逆制止、系統的脱感作法、不安階層表

B.F. スキナー 1904-1990 行動分析学
コンセプト:行動は報酬と罰(オペラント条件づけ)によって変化する
キーワード:オペラント条件づけ、応用行動分析(ABA)

アーロン・ベック 1921-2021 認知療法
コンセプト:状況そのものでなく自動思考の歪みが苦しみを生む
キーワード:自動思考、認知の歪み、CBTの直接的基盤

アルバート・エリス 1913-2007 論理情動行動療法(REBT)
コンセプト:出来事でなくその受け止め方(信念)が苦しみを生む
キーワード:論理療法、ABC理論、不合理な信念

マーシャ・M・リネハン 1943- 弁証法的行動療法(DBT)
コンセプト:変化を目指すことと今の自分を受け入れることのバランスを取る
キーワード:DBT、境界性パーソナリティ障害、東洋のマインドフルネス融合

スティーブン・C・ヘイズ 1948- 関係枠組み理論(RFT)・ACT
コンセプト:思考をコントロールせずあるがまま受け入れることが行動変容につながる
キーワード:第三世代CBTの命名者、関係枠組み理論、アクセプタンス

ジンデル・セガル 1956- マインドフルネス認知療法(MBCT)
コンセプト:マインドフルネスと認知療法の融合でうつ病の再発を防げる
キーワード:MBCT、MBSRとの融合、うつ病再発予防

ポール・ギルバート 1951- コンパッション・フォーカスト・セラピー(CFT)
コンセプト:激しい自己批判や恥には慈悲(自分への思いやり)で応じる
キーワード:CFT、脅威・鎮静システム、進化心理学

VI. ゲシュタルト心理学から社会の心理学へ

マックス・ヴェルトハイマー 1880-1943 ゲシュタルト心理学
コンセプト:全体は部分の総和以上の意味を持つ
キーワード:ゲシュタルト心理学創始、仮現運動(ファイ現象)、生産的思考

ヴォルフガング・ケーラー 1887-1967 ゲシュタルト心理学
コンセプト:知覚は近接・類同・閉合などの原理で体制化される
キーワード:知覚の体制化、洞察学習(類人猿実験)

クルト・コフカ 1886-1941 ゲシュタルト心理学
コンセプト:ゲシュタルトの原理は理論として体系化・普及されるべきだ
キーワード:『ゲシュタルト心理学の原理』、理論の体系化

シェリフ 1906-1988 社会心理学
コンセプト:曖昧な状況で人は互いの判断へと収束していく
キーワード:自動運動効果、集団規範

アッシュ 1907-1996 社会心理学
コンセプト:正解が明白でも人は集団の圧力に屈する
キーワード:同調実験、線分判断課題

セルジュ・モスコヴィッシ 1925-2014 社会心理学
コンセプト:一貫した少数派もまた多数派の判断を変えうる
キーワード:少数派影響、転換理論

小坂井敏晶 1956- 社会心理学
コンセプト:民族や裁きといった社会の枠組みは虚構として構築される
キーワード:『民族という虚構』、『人が人を裁くということ』、共同体論

VII. 生産性を求める、場と組織の心理学

クルト・レヴィン 1890-1947 社会心理学・場の理論(トポロジー心理学)
コンセプト:人の行動は個人特性と環境の相互作用の関数として決まる(B = f(P, E))
キーワード:場の理論、グループダイナミクス、アクション・リサーチ、解凍-変化-再凍結モデル、Tグループ、ツァイガルニク効果

ブルース・タックマン 1938-2016 教育心理学・グループダイナミクス
コンセプト:チームは形成期・混乱期・統一期・機能期・散会期という予測可能な5段階を経て成熟する
キーワード:タックマンモデル、Forming-Storming-Norming-Performing-Adjourning、小集団発達研究

野中郁次郎 1935-2025 経営学・知識創造理論
コンセプト:組織の知識は暗黙知と形式知の相互変換を通じて創造される
キーワード:SECIモデル、暗黙知・形式知、知識創造企業、場、フロネシス(実践知)

ジョン・コッター 1947- リーダーシップ論・組織変革論
コンセプト:大規模な組織変革は、8段階のプロセスを飛ばさず順に踏むことでのみ成功する
キーワード:変革の8段階プロセス、リーダーシップ=変革、マネジメント=複雑性、デュアル・システム

ダニエル・キム 生年非公開 組織学習論・システム思考
コンセプト:組織の成果は「関係の質」を起点とする循環構造(グッドサイクル/バッドサイクル)によって決まる
キーワード:成功循環モデル、関係の質・思考の質・行動の質・結果の質、システム思考

VIII. サイバネティクス・複雑系の旗手たち

ウィリアム・ロス・アシュビー 1903-1972 サイバネティクス
コンセプト:システムは外部指示なしに自ら秩序を生み出す
キーワード:自己組織化、アトラクター、ホメオスタット

イリヤ・プリゴジン 1917-2003 物理化学・非平衡熱力学
コンセプト:平衡から遠く離れた系では自発的に新しい秩序(散逸構造)が生まれる
キーワード:散逸構造、エントロピー生成極小原理、ノーベル化学賞

ヘルマン・ハーケン 1927-2024 物理学・シナジェティクス
コンセプト:多数の要素の相互作用から少数の秩序変数が全体を支配する
キーワード:協同現象論、秩序変数、縮約原理

エドワード・ローレンツ 1917-2008 気象学・数学
コンセプト:初期値のわずかな違いが結果を大きく変える
キーワード:バタフライ・エフェクト、カオス理論、ローレンツ・アトラクター

ウォルター・フリーマン 1927-2016 神経生理学
コンセプト:脳の認識は混沌とした感覚入力から知覚空間の固定点へのマッピングだ
キーワード:カオス的アトラクタ、嗅球、EEG解析

カール・フリストン 1959- 理論神経科学
コンセプト:脳は感覚入力の驚き(予測誤差)を最小化するよう働く
キーワード:自由エネルギー原理、能動推論、ベイズ脳仮説

後藤洋平,ポートレート

プロジェクト進行支援家
後藤洋平

1982年生まれ、東京大学工学部システム創成学科卒。
製造業DX・人材ビジネス・IT開発・新規事業などの経験から、プロジェクト活動における「未知」という難しさを痛感。解決策を模索するなかで、学生時代に学んだ設計学・サービス工学のプロジェクト活動への応用を着想した「プ譜(プロジェクト譜)」は、進行設計を計画書ではなく「譜面」として表現することで、管理に寄りすぎず、柔らかな進め方ができる手法として、静かながらも長年の支持を得ている。

組織マネージャ、ITプロマネ、二児の父という三足のわらじが履ききれなくなって、2019年5月に独立。企業研修や実務支援に取り組むなかで、どの業界、企業、人にも共通する悩みがあると理解し、なにか一助になりたいと思いながらも試行錯誤を続けている。近年はプ譜を用いた壁打ちセッションを試行中。

著書

・予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)
・見通し不安なプロジェクトの切り拓き方(宣伝会議)
・紙1枚に書くだけでうまくいく プロジェクト進行の技術が身につく本(翔泳社)
・“プロジェクト会議”成功の技法 チームづくりから意思疎通・ファシリテーション・トラブル解決まで(翔泳社)
・決まるプレゼン・会議の組み立て 意思決定のための「場」の演出論(ビジネス教育出版社)

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