
新刊を記念して、新しい形式で連載を始めてみることにしました。プロジェクトワークの現場の具体的な悩みに対して、それをひもとくフレームワークとその組み合わせ方を解説!
第一回は、「間延びしがちな大規模案件の全体管理」がテーマです。
今回のQuestion
携わるプロジェクトがPhase1、Phase2……と進むにつれて、全体スケジュールがずるずる間延びしていく案件が多いです。特に他部署との調整や、別プロジェクトの進捗に影響される案件だと、自分たちの努力だけではどうにもならない部分があり、PJTを管理しきるポイントがあれば知りたいです。体験談でも構いません。
Answer
ズルズル間延びする、というお悩み、本当によくわかります。この状況全体を、たとえばWBSのような計画手法で管理するのは、かなり至難の業だと思います。先の展開やスケジュールが、外部要因やコントロールできない要因により調整しづらい場合は、WBSというよりも、マイルストンベースで整理していくのが現実的な対応となります。
以下は多機能サイト開発のマイルストンの、設定の一例です。

ポイントはふたつあります。期日の目安は置いておくものの、関係各位の動き方いかんによっては守りきれないので要注意、というメッセージを発すること。そして、後にズレた場合、なにが起きるのかの共通認識をもたせること。
このふたつにより、別々で動いているロードマップ同士の重なり、結節点を明らかにします。そのことによって、「間延び」ではなく「引き締まった」プロジェクト運営が可能となります。
以下のコーナーでは、「プロジェクトフレームワーク図鑑」から、「大規模プロジェクトを間延びさせないためのフレームワーク」をご紹介します!
フレームワーク① ロードマップ
要素:出発点・通過点・到達点

大規模プロジェクトでPhase1、Phase2という区切りが設定されるのは、実は「日程を分割しただけ」で、意味のある通過点になっていないことが多い。各Phaseの終わりに「何が確定していれば次に進めるのか」を通過点として定義し直すと、「なんとなく延びる」から「延びた理由が言える」状態に変わる。
それぞれの利害関係者が、それぞれのロードマップを見ている。そしてロードマップ同士は、互いに影響しあう。「どういうふうに絡み合っているのか」「誰のどの通過点同士が重なるのか」これを見つけ出すのがコツ。
フレームワーク② リスクマッピング
要素:影響度・発生確率

「他部署の調整」「他PJTの進捗」は、コントロールできない外部要因ではなく、実は事前に洗い出せるリスクであることが多い。影響度×発生確率で並べておくことで、「起きてから慌てる」のではなく「起きる前提で手を打っておく」対象を絞り込める。
フレームワーク③ エスカレーション
要素:事象種別・連絡ルート・連絡方法

他部署・他PJTの遅延は、自分たちだけでは解決できないからこそ「誰に」「いつ」「どうエスカレーションするか」を事前に決めておくことが唯一の防御策になる。ここが未設計だと、遅延に気づいた時には手遅れになりやすい。
「管理しきる」とはどういうことかというと、実は「自分でコントロールできない部分の連絡設計をすること」だったのである。
まとめ
マルチベンダ、雇用形態の多様化、スコープの常時変動といったありとあらゆる不確実性を考慮すると、規模の大きな案件を「全体管理する」という理想は、ある意味では、もはや不可能と言えるかも知れません。
ただむしろ、全体管理をするのではなくて、自分が守るべきスコープとロードマップを明確にしたうえで、影響し合うほかのスコープとの関係性を正しくする、ということは可能です。
逆に言えば、関与するプレーヤーの皆がその所作を守ることができたとき、案件全体が一気に躍動する、という奇跡は、おきてもおかしくないのです。
参考
複雑化した現代プロジェクトについて
スコープの概念について

プロジェクト進行支援家
後藤洋平
1982年生まれ、東京大学工学部システム創成学科卒。
製造業DX・人材ビジネス・IT開発・新規事業などの経験から、プロジェクト活動における「未知」という難しさを痛感。解決策を模索するなかで、学生時代に学んだ設計学・サービス工学のプロジェクト活動への応用を着想した「プ譜(プロジェクト譜)」は、進行設計を計画書ではなく「譜面」として表現することで、管理に寄りすぎず、柔らかな進め方ができる手法として、静かながらも長年の支持を得ている。
組織マネージャ、ITプロマネ、二児の父という三足のわらじが履ききれなくなって、2019年5月に独立。企業研修や実務支援に取り組むなかで、どの業界、企業、人にも共通する悩みがあると理解し、なにか一助になりたいと思いながらも試行錯誤を続けている。近年はプ譜を用いた壁打ちセッションを試行中。
著書
・予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)
・見通し不安なプロジェクトの切り拓き方(宣伝会議)
・紙1枚に書くだけでうまくいく プロジェクト進行の技術が身につく本(翔泳社)
・“プロジェクト会議”成功の技法 チームづくりから意思疎通・ファシリテーション・トラブル解決まで(翔泳社)
・決まるプレゼン・会議の組み立て 意思決定のための「場」の演出論(ビジネス教育出版社)

4年ぶりに、新刊が発売!
著者の後藤がこれまでさまざまな企業のプロジェクト支援や研修の現場で培ってきた経験をもとに、「実際に使えるフレームワーク」を体系的にまとめた一冊です。約20年をかけて壁にぶつかり、悩み、突破してはまたぶつかり、ということをやってきた全ての戦訓と気付きを濃縮還元し、「使えるところだけ」をテキストにしました。

翔泳社 書籍ページへのリンク
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