導入しても「意味がない」「もうやめてほしい」と言われがちな1on1。対話の失敗地獄から抜け出すヒントは?

この記事について

1on1とは?

上司と部下が週1〜月1回、30〜60分ほど1対1で行う対話の場です。
業務報告ではなく、部下のための時間とするのが大前提とされています。

発祥と普及の流れ

1on1は、1980年代に米国で生まれた方法です。IntelのCEOアンディ・グローブ氏が著書『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』の中で解説し、有名になりました。その後Googleが「マネジャーの習慣」として制度化するなどの動きを受けて、世界中に広まりました。日本では2010年代後半から急速に普及が進みました。

期待できるとされている主な効果

エンゲージメント向上・離職率低下
「ちゃんと見てもらえている」という安心感を生み、定着率の改善につながると言われています。

心理的安全性の醸成
問題の早期発見や相互理解が深まり、チームの信頼関係が強くなると言われています。

個人の成長支援
キャリア目標の明確化やスキルアップ支援、業務上の障壁の除去ができるとされています。

代表的な1on1の4つのスタイル

コーチング型
部下の話を傾聴し、質問で気づきを引き出す。週1回・30〜60分が目安。

フィードバック型
業績や行動に対して評価と改善提案を行う。月1〜2回・30〜45分が目安。

目標管理型(OKR連動)
OKRやKPIの進捗確認を中心に行う。隔週〜月1回・30分が目安。

ウェルビーイング型
メンタルやキャリア、働き方全般を扱う。月1回・ゆるめの雰囲気で実施。

日本企業の導入状況

 日本での初期導入は、2010年頃でした。最初はIT・Web系ベンチャーが若手人材育成、離職防止、マネージャ育成を主に目的として、導入を始めました。大企業での導入が本格化したのは2018年頃からで、こちらは働き方改革やエンゲージメント向上、リモートワークへの対応が主な関心事項でした。

規模2026年現在の導入状況
大企業(1,000名以上)約70%
中小企業約45%
ITベンチャー、スタートアップ約85%

なぜ、いま、1on1?

 昨今、多くの企業の業務が「プロジェクト型」へと移行しています。

 多くの人が同じようにルーチンワークをこなす場と違って、プロジェクト型の業務では、従業員個々人の悩みを補足しづらく、気づいたときには重症化していることも珍しくありません。
 昨今、あらゆる規模・業種の組織において若年層の業務不調 → メンタル不調 → 休職、離職 → 人材層が形成されない → 採用コストの高止まり といった負のスパイラルが常態化しており、いま改めて、1on1のより望ましいあり方に関心が高まっています。

代表的な1on1支援ツール

大企業での導入が進む中で、1on1記録、サーベイ連携、エンゲージメント分析、AIフィードバックなどのサービスも数多く提供されるようになりました。支援ツールを大きく分けると、以下の3タイプに分類できます。

サービス特徴向いている企業
Kakeai1on1特化型。
事前テーマ設定、上司への対応ヒント、AI要約、フィードバック分析が強み。
1on1改善ノウハウが深い。
1on1を全社定着させたい
中堅〜大企業
TeamUp「対話の型化」に強み。
テンプレート設計、事前トピック提出、AI要約などで運用定着を支援。
これから1on1文化を作りたい、
という企業
HRBrainタレントマネジメント統合型。
1on1だけでなく人事評価・目標管理・人材データ管理まで一元化。
人事基盤全体を統合したい企業
WistantOKR・MBOと1on1を接続。
目標管理と対話をセットで運用可能。
OKR文化があるIT企業
カオナビ人材DB中心。
1on1ログ・スキル・評価履歴を紐付け可能。大企業導入が多い。
タレントマネジメント重視企業
SmartHR労務基盤と連携しながらサーベイ・人材管理を拡張。
1on1単体というよりHR統合基盤の一部として提供。
SmartHR導入済み企業
CYDASスキル・配置・キャリア可視化と連動。
人的資本経営文脈に強い。
大企業・人材戦略部門
Motify HRオンボーディング・離職防止寄り。
若手フォローに強い。
若手離職課題がある企業

生成AIの普及後は、AIによる質問提案、会話要約、感情分析、ハイリスク検知、マネージャー改善レコメンドなど、高機能なフィーチャーが次々とリリースされています。

代表的な1on1研修

ツールを入れるだけではうまく定着しない、という事情もあり、1on1をどうすればよいかを学べる研修サービスも、数多く提供されています。以下に、日本の代表的な1on1研修ベンダーをご紹介します。


① リクルートマネジメントソリューションズ
「1on1ワークショップ」は管理職・役員を対象とした1日間のプロコーチ運営のワークショップ形式で、メーカーへの管理職3,200名向け研修など、大企業への導入実績も豊富。研修後のPDCAサポートまで一体提供する点が強み。

② パーソル総合研究所
日本における1on1普及の第一人者・本間浩輔氏(元ヤフー)監修のプログラムを提供。2日間の研修+受講生3名のラーニングトリオによる相互学習を組み合わせた、実践を徹底的に反復する構成が特徴。上司だけでなく部下向けに漫画(コミックラーニング)で1on1を解説する教材を配布するユニークな設計も備えている。

③ PHP研究所(PHPゼミナール)
立教大学・中原淳教授との共同開発による研修を提供。「経験学習サイクル」を軸に、上司・部下それぞれの立場から事前準備・面談・事後行動の3ステップを学ぶのが特徴です。公開セミナー形式で他社の受講者と学び合える点も強み。

④ 産業能率大学 総合研究所
信研修形式で1on1の基礎から定着まで体系的に学べるコースを提供。「経験学習サイクル」の手法を取り入れており、ケーススタディで実際の1on1を疑似体験できる設計になっている。忙しい管理職が自分のペースで学べる点が特徴。

⑤ きづくネットワーク
東京・福岡に拠点を持ち、傾聴トレーニングや質問トレーニングを中心とした「1on1面談実施スキル向上研修」を提供。全国対応かつ課題に応じたカスタマイズを基本としている。


全体の傾向として、 最近はロールプレイ・ワーク中心の「実践型」が主流で、研修当日だけで終わらず事後フォローまで含めた設計が増えています。また、上司だけでなく部下側も研修対象に含めるプログラムが注目されています。 

導入しても「意味がない」となる、ありがちなケースは?

以上のように、1on1という手法への期待感から、様々な支援ツールや教育サービスが普及していますが、一方で「意味がない」「やめてほしい」「1on1の場でパワハラを受けた」といった声も多く聞かれます。代表的なパターンを整理しました。 

パターン① 詰められる・怖い

「なぜできなかったか?」と過去を追及する、業務の進捗確認だけで終わる、否定だけするといった上司の関わり方が、部下の心理的安全性を大きく損ない、結果として1on1が「怒られる時間」「説教の場」として記憶され、次回から憂鬱になるという悪循環が生まれます。

パターン② 進捗報告会になっている

1on1の時間が、具体的な業務の進捗報告や設定した目標の確認だけで終わってしまうケースもあります。目標を達成していない場合、不達成の理由説明やいつまでに達成できるかという話に終始してしまい、部下は本来話したいことを後回しにして、上司が聞きたいことだけを報告する場になりがちです。

パターン③ 上司が話しすぎる・自分語りになる

「自分の悩み相談のはずが、上司の武勇伝を聞かされた」「一方的な思い込みで話をされる」「言ったことをさえぎられ、自分の意見を押し付けられた」といった声が実際に多く寄せられています。「部下のための時間」が実態として「上司のための時間」になってしまうパターンです。

パターン④ 目的がわからない・形骸化している

上司側は「部下の心配ごとを聞き、必要であれば解決の手助けをしたい」と考えているが、部下側は「上司と面談する機会が与えられたので、質問された内容に答えているだけ」という認識にすぎないケースも多く指摘されています。双方の目的がずれたまま続くと、「何か困ったことはない?」という抽象的な質問に「特にありません」と答えるだけで終わるような形骸化が起こります。

パターン⑤ 評価・監視に使われていると感じる

「努力や頑張りを正当に評価されなかった」「思っていたよりも低い評価を受けた」「上司が業務内容を理解していなかった」という声も多く、1on1が人事評価の場として機能してしまうと、本来は評価とは切り離すべき場が、実質的な査定の場になり、プレッシャーしか生まれません。

パターン⑥ 上司側も苦痛・負担になっている

上司にとっても、複数の部下と向き合う時間を取るのは負担になりやすく、自身の学びの場として設計されていないとすり減ってしまう、という声もある。部下の不満だけが語られがちですが、上司側のストレスや「やらされ感」も形骸化の大きな原因のひとつです。


 まとめると、失敗パターンの根本はほぼ共通していて、「部下のための時間」という大前提が崩れているときに負の声が生まれやすいと言えます。1on1を本来の意味あるものにするためには、上司の対話スキル向上、適切な場の設計と設定、といったものが欠かせません。
 しかし、昨今の企業においては上司といえどもプレイヤーを兼ねるプレイングマネージャであることも多く、部下に対して理想の上司であろうとすること自体が、大きな負担になっています。そのようななかで、正しい1on1の場を作ろうとしても、そのための案内や研修などに時間を取られると、そもそも1on1という取り組み自体に負担感や忌避感が出てしまいます。

 くわえて、そんな1on1を効率的に運用するための型化、マニュアル化、データ化するとなると、さりとておざなりにやることもできず、二重三重の負のループに陥ってしまうおそれもあります。

まとめ:導入する意味のある1on1を実現するために

ゴトーラボでは、プロジェクト組織やプロジェクト業務に独特の問題に寄り添う
「プロジェクト型業務の多い組織のための、外部1on1」として「プ譜の純粋壁打ち」サービスを提供しています。

弊社のコンセプトは、従来の1on1にありがちな「仕組みをいれたが、喜ばれない、意味が出ない」ということにならないために、
業務を題材に、解決を焦らない純粋壁打ちを行う
思考の棚卸しと向かっていきたい方向性を言語・構造化する
個人情報を除いた必要な情報を抽出し、経営・事業運営に必要な示唆をマネジメント陣にフィードバックする
という形のサービス提供を実現しています。

純粋壁打ちの公式メンター「Wallmen」によるメンタリング提供だけでなく、
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ぜひ、ご参考いただけますと幸いです。

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    後藤洋平,ポートレート

    プロジェクト進行支援家
    後藤洋平

    1982年生まれ、東京大学工学部システム創成学科卒。ものづくり、新規事業開発、組織開発、デジタル開発等、横断的な経験をもとに、何を・どこまで・どうやって実現するかが定めづらい、未知なる取り組みの進行手法を考える「プロジェクト工学」の構築に取り組んでいます。
    著書に「予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)」「”プロジェクト会議” 成功の技法(翔泳社)」等。

    コンサルティング実績

    ●ドローンを用いた施設見守りシステムの実証実験
    ●ブロックチェーンを使った新規事業の実証実験
    ●完成車メーカーのデジタル価値創造プロセス策定
    ●デジタル広告大手企業の教育体系再構築
    ●商店街活性化のための人流測定に関する調査
    ●OEM精密機械メーカーへの新規事業テーマ探索支援
    ●ゲームプラットフォームPMO責任者サクセッション支援
    ●多機能サイト制作の商談、受注、納品プロセス標準化
    ●SaaS導入コンサルティング部門の立て直し支援

    講座・研修等の実績

    ●SIer向け プロジェクトリーダー育成プログラム
    ●大手ビジネススクールにおける公募型講座
    ●企業内大学における定期開催型の講座
    ●大企業 企画職むけプロジェクトマネジメント研修
    (金融、ゼネコン、エネルギー、物流、教育、通信 等)
    ●中小企業経営者向け デジタル変革に向けての伴走型講座
    ●大学内講義へのゲスト登壇
    (東京大学、近畿大学、名城大学)
    ●開発ディレクター/SE向けの長期伴走グループコーチング

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    著書

    ・予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)
    ・見通し不安なプロジェクトの切り拓き方(宣伝会議)
    ・紙1枚に書くだけでうまくいく プロジェクト進行の技術が身につく本(翔泳社)
    ・“プロジェクト会議”成功の技法 チームづくりから意思疎通・ファシリテーション・トラブル解決まで(翔泳社)
    ・決まるプレゼン・会議の組み立て 意思決定のための「場」の演出論(ビジネス教育出版社)