プロジェクトワークの現場の具体的な悩みに対して、それをひもとくフレームワークとその組み合わせ方を解説!第9回のテーマは、「初心者にできること」です。

今回のQuestion
WBSなどのプロジェクト管理手法に詳しく、経験も多い方が多くいるプロジェクトに参加する場面の中で追いついていけない感覚になることがあります。
難しいとあきらめずに、初心者だからこそ課題感を伝えられるきっかけとなる発信の仕方や行動、心構えなどがありましたらご教示いただけますと幸いです。
Answer
「初心者だからこそ伝えられることがあるはず」という直感は、実はとても理にかなっています。
むしろ、この問いを持ってくださった時点で、ベテラン以上にチームに貢献できる心構えを持っておられます。というのも、経験豊富な人は、細部の精度を上げることに意識が向きやすく、逆に「そもそも誰のためのWBSか」「これで本当に伝わるのか」という素朴な視点を失いがちなんですよね。
改めて、ご質問者様の視点に価値がある理由を明確に言語化するとしたら、以下の3つのフレームワークがお勧めです。
①ノックアウトファクター(進行管理)
②テーマの窓(進行管理)
③DESC法(ドキュメンテーション)
フレームワーク① ノックアウトファクター
要素:作り手・売り手・買い手・使い手

ノックアウトファクターの考察は、プロジェクト管理やその現場の専門知識がなかったとしても、つまり完全な初心者の立場からでも検討が可能なフレームワークです。
なぜなら、売り手、買い手、使い手は、そのプロジェクトにおける製造工程に関しては、まさしく質問者と同じ初心者の立場であるからです。
経験豊富なメンバーは、WBSを緻密に作り込むほど「作り手」目線に深く入り込み、無意識のうちに「使い手(このWBSを実際に使って動く人、あるいはこの成果物を使う人)」の視点から離れていきがちです。初心者は、まさにその使い手に近い立場から違和感を覚えやすいという強みを持っています。「分からない」と感じた瞬間は、実は「使い手にとって分かりにくい」というノックアウトファクターの芽を、あなたが最初に察知した瞬間かもしれません。
フレームワーク② テーマの窓
要素:本題・課題・難題・主題

次に、製造過程について専門知識を持たない立場からできることは「問いを深めること」であり、そのフレームとしてお勧めしたいのが「テーマの窓」です。
初心者感覚による発信は常に有効ですが、とはいえ「追いついていけない感覚」という漠然とした不安のすべてを発信するのは得策ではありません。仕分けを飛ばして感覚のまま発言すると、「経験不足からくる的外れな指摘」と受け取られるリスクが高まります。
単に自分の理解が追いついていないだけの部分(学習で解決する範囲)と、構造的に分かりにくい・整理しきれていない部分(本当に発信すべき課題)を分けることで、発信すべきものだけが手元に残ります。仕分けたうえでの発言は、プロジェクト進行における本質的な課題を指摘したものとして届きやすくなります。
フレームワーク③ DESC法
要素:Describe状況説明・Express感情表現・Specify要望・Consequence結果

最後に、実際にどう言葉にするか、発信のコツをご紹介します。DESC法は、状況を客観的に説明し(Describe)、自分がどう感じたかを伝え(Express)、望むことを具体的に伝え(Specify)、それによってどんな良い結果が期待できるかを添える(Consequence)、という型です。
たとえば、以下は一例ですが、
●このタスクの粒度について(Describe:この部分の記載を見て)
●私にはどう進めればよいか掴みにくく感じました(Express)
●もう一段、作業内容を細かく書いていただけると助かります(Specify)
●そうすれば、アウトプットのズレが予防できると思っています(Consequence)
このように、「分かりません」一言で済ませるのではなく、この型に沿って見ると、初心者の発言でも指摘やクレームではなく、提案として受け取ってもらいやすくなります。
まとめ
初心者が、いきなり経験者に追いつこうとしても、現実問題として、なかなか難しいものです。むしろそれはそもそも不可能なもの。
そして、実は、初心者であるからこそ、発揮できる価値があります。
ベテランゆえに見落としがちな部分を、フレッシュな、曇りなき眼で見つけることが、チームへの大きな貢献になることも多くあります。
参考:あなたの悩みの解決法が、必ず見つかる一冊。
本書は、著者の後藤がこれまでさまざまな企業のプロジェクト支援や研修の現場で培ってきた経験をもとに、「実際に使えるフレームワーク」を体系的にまとめた一冊です。
東大在学時代の堺屋太一ゼミ「知価社会論」、設計学・サービス工学研究室での学び。新卒就職後の、製造業DXベンチャーでの現場体験、次の会社での新規事業悪戦苦闘。
さらにはSaaSの会社に転職し、カスタマーサクセスの立ち上げやSIプロジェクト地獄。独立してからの異業種PM支援や人材組織開発、自前のプロダクトアウト七転八倒。そのなかで試行錯誤した、メンタル未病ケアやストレス対策。
約20年をかけて壁にぶつかり、悩み、突破してはまたぶつかり、ということをやってきた全ての戦訓と気付きを濃縮還元し、「使えるところだけ」をテキストにしました。

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執筆者のご紹介

プロジェクト進行支援家
後藤洋平
1982年生まれ、東京大学工学部システム創成学科卒。
製造業DX・人材ビジネス・IT開発・新規事業などの経験から、プロジェクト活動における「未知」という難しさを痛感。解決策を模索するなかで、学生時代に学んだ設計学・サービス工学のプロジェクト活動への応用を着想した「プ譜(プロジェクト譜)」は、進行設計を計画書ではなく「譜面」として表現することで、管理に寄りすぎず、柔らかな進め方ができる手法として、静かながらも長年の支持を得ている。
組織マネージャ、ITプロマネ、二児の父という三足のわらじが履ききれなくなって、2019年5月に独立。企業研修や実務支援に取り組むなかで、どの業界、企業、人にも共通する悩みがあると理解し、なにか一助になりたいと思いながらも試行錯誤を続けている。近年はプ譜を用いた壁打ちセッションを試行中。
著書
・予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)
・見通し不安なプロジェクトの切り拓き方(宣伝会議)
・紙1枚に書くだけでうまくいく プロジェクト進行の技術が身につく本(翔泳社)
・“プロジェクト会議”成功の技法 チームづくりから意思疎通・ファシリテーション・トラブル解決まで(翔泳社)
・決まるプレゼン・会議の組み立て 意思決定のための「場」の演出論(ビジネス教育出版社)

4年ぶりに、新刊が発売!
著者の後藤がこれまでさまざまな企業のプロジェクト支援や研修の現場で培ってきた経験をもとに、「実際に使えるフレームワーク」を体系的にまとめた一冊です。約20年をかけて壁にぶつかり、悩み、突破してはまたぶつかり、ということをやってきた全ての戦訓と気付きを濃縮還元し、「使えるところだけ」をテキストにしました。

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