
この記事では、ゴトーラボのコンサルティング事例について、ご紹介いたします。
もくじ
1 事例概要
2 ご依頼のきっかけ
3 支援の流れ
4 支援の結果
5 支援を受けての感想
事例概要
クライアント | ポーターズ株式会社 様 ・人材紹介、派遣会社向けのマッチングCRMをSaaS型で提供 ・従業員数 110名 (連結、2024年) ・東京証券取引所グロース市場 |
カウンターパート | ・進藤 玄太 様(ゼネラルマネージャ、営業部門管掌) ・于 暁姝 様(マネージャ、導入コンサルティングチーム管掌) |
当社へのご依頼の背景 | ・顧客への業務システム導入の複雑化、高難易度化 ・カスタマーサクセスや導入コンサルティングの、提供サービスの質を高めたい ・導入プロジェクトの進め方を整理したい ・PMやPLの役割を再定義し、育成プロセスを体系化したい |
提供サービス | ・コンサルティング (SaaS導入プロジェクトにおける業務、組織の改善) |
実施したこと | ・商談からプロジェクトキックオフまでのプロセスの見直し ・見積もりの前提条件整理のためのヒアリング項目の見直し ・プロジェクト企画書の整備 ・各職級における役割、ミッション、スキルの整理 ・付帯する、営業部門責任者様、導入部門責任者様へのご助言 |
支援期間 | ・3ヶ月 (2025年5月 – 7月) |
ご依頼のきっかけ
ポーターズ社は、ノーコード、ローコード型の基幹業務システムSaaSの先駆け的な企業です。2010年代の前半頃から、柔軟なカスタマイズ機能と、APIによる外部システムとの連携に強みのあるプロダクトを提供されてきました。
数多い導入実績を誇り、業界内では知らない人はいない、といっても過言ではない老舗企業です。セグメント内トップシェアのポジションを築き、安定した事業を運営されています。
支援に至る背景的な課題が生じたのは、近年のことでした。社会全体にSaaS型の業務システムが普及、拡大するなか、導入プロジェクトの複雑性や難易度が高まってしまい、いくつかの案件で、導入に難航してしまう事例が発生しました。業界のトップランナーとして、責任を持って、確実に良いシステムを提供しなければならない、その責務があるとの使命感をお持ちの、営業部門のゼネラルマネージャーである進藤様の強い思いと危機感から、支援のご依頼をいただきました。
支援に対する期待:顧客との適切なパートナーシップが確立できるようになりたい
今回、進藤氏が支援を受ける結果として期待されていたのは「顧客とのパートナーシップを確立できるようになりたい」ということでした。具体的に分解しますと、下記のアジェンダを設定することになりました。
●商談とプロジェクト開始への接続方法を改善したい
●キックオフ時に、できる限り良い形でスタートダッシュが切れるようになりたい
●案件ベースで、「このプロジェクトは」というものに関する、具体的な助言がほしい
●WBSの書き方や体制図などの資料に問題点や改善点があったら指摘してほしい
●社内のプロジェクトを横櫛で管理し、案件に穴があったら早期発見できるようにしたい
問題解決のために、必要な提供物
上記を解決するに当たって必要な支援内容としては、以下のアジェンダを設定しました。
①前提として、一般論としての知識のインプットが必要
・データ構造、システム構成、データ形式、Web、アルゴリズムなどの技術的な基礎知識、感覚
・SIプロジェクトの上位概念としてある、ビジネス分析、コンサルテーションに関する実践的な知識
②一般論として正しい認識を持つためのディスカッションが必要
・業務システムとはなんぞや、業務システムの導入成功とはなんぞや、という話
・請負契約とはなんぞや、プロジェクトマネジメント義務とはなんぞや、という話
・PMにおける、QCD目標設定、リスク検討、利害関係者特定、などの考え方
・PM業務における基礎的なコミュニケーション作法(議事録、資料作成、定例運営、資料レビュー)
③上記の一般論に加えて、ポーターズに固有の問題についての掘り下げ考察も必要
・各種資料テンプレートや設計フォーマットの改善
・PORTERSのシステム特性を踏まえた、導入コンサルティングの進め方の注意点
支援の流れ
支援を行うにあたっての初期状態は「個人の知識やスキル的なもの」「組織の仕組み的なもの」「個別の案件に関する具体的なもの」など、複数の課題がからまりあっていました。
また、当然ながら、組織マネジメントや個別の顧客対応、社内のマネジメント業務など、多岐にわたる役割を抱える進藤氏にとって、時間がない、ということが最大の課題でした。
支援は是非受けたい、しかし、支援を受けるための時間を捻出するのも、正直、苦しい・・・という状況でした。
その状況を踏まえて、一旦、
●月に1時間のMTGを、4回実施する
●あえて曜日・時間固定の定例にせず、スケジューラによる柔軟な時間設定とする
●そのなかで、必要なドキュメント作成や調査等が必要であれば、随時、対応する
という形で支援を開始することにしました。
3ヶ月のなかでの状況の推移は、以下のような形となりました。
時期 | 議論した内容や実施した作業 | 結論 |
---|---|---|
初月 | ・三ヶ月の支援における最終ゴール、成果物はなにかの議論 ・現在起きている問題の深層分析 ・状況を好転させるための、キーファクターの模索 | プロジェクト企画書の テンプレートをブラッシュアップ することこそが、最優先だ! |
2ヶ月目 | ・新たなプロジェクト企画書のテンプレート案の作成 ・それを見ながら、社内組織や業務プロセスのあり方の議論 ・その議論を深める中で、あるべきプロジェクト像の考察 | 今後のあるべき導入プロジェクトの 業務プロセスのイメージが湧いた |
3ヶ月目 | ・新テンプレートの先行リリース、結果検証 ・改めて、今後のあるべき組織像の整理 ・各職級や役割の定義 必要なコアスキルや育成の要点の整理 | あるべき導入プロジェクトを 実行するための、未来の 組織のあり方が言語化できた |
支援の結果
最終的な、主な成果物は、以下の3つとなりました。
・導入プロジェクトを進めるための、企画や要件を整理するための、新テンプレート
・導入プロジェクトを進めるための、マイルストンや組織体制を整理する、新テンプレート
・今後の組織改善のための役割、スキル、育成プロセスの概略資料
改めて振り返りますと、後藤自身の感覚としても、短い期間のなかで、どこをゴールに置くべきか、どれぐらい時間をかけることができるのか、なにを目指すのか、誰に対して働きかけるのか、というところを考えるのが、難易度の高い事案だったと感じています。
そのなかで、進藤氏の真摯な思いとの共鳴、共感から、ベストな成果物を残すことができたように、感じています。
とはいえ、テンプレートの整備や社内組織に関する考え方の整理は、スタート地点です。実際に社内オペレーションを改善し、エンドクライアントに価値を提供することができるようになるのが、新のゴールです。そこに至るまでの伴走をする、という選択肢もありましたが、今回は、その部分は自力で取り組みたい、とのことでした。
是非、ゴールを達成されることを祈念し、コンサルティングワークは幕を閉じることになりました。
進藤さん、于さん、頑張ってください!!
支援を受けての感想
進藤玄太 様(ゼネラルマネージャ、営業部門管掌)
3ヶ月のご支援ありがとうございました。ワーク全体を通して短期間で多くのアウトプットを出すことが出来ました。
・プロジェクト企画書
・導入キックオフテンプレート
・プロジェクト支援チームのロール設計 その他
社内だけではとても形にすることが難しかったと思います。
かけた時間以上にアウトプットが出せたのは、後藤さんが以下の点に非常に優れていたからだと思います。
・アジェンダ設定
・ヒアリングスキル
・言語化力
・ドキュメント作成
・課題解決に対する引き出しの多さ
ワーク初日の時点では、何から手をつけて良いのかわからず自身の解像度も低い状態でしたので、後藤さんとのディスカッションからスタートしました。正直上手く進められるかどうか不安もありましたが、ディスカッションのアジェンダやその会話から出てきた参考資料など、とてもスムーズに進行いただき、その後は一切の不安なく目的達成に向けて進む事が出来たと思います。
MTGでディスカッションをした内容が次の回には形になっていたり、MTGの最中でもどんどん言語化して形にしていただきました。当社にとってはここからが本番にはなりますが、まずはスタートラインに適切に立てたことが今回の成果となります。
于 暁姝 様(マネージャ、導入コンサルティングチーム管掌)
今回のご支援を通じて、プロジェクト推進の土台となる仕組みや考え方をチームに着実にインストールできたことを、大変心強く感じています。
私たちはこれまでも、自社SaaSの導入支援を推進してきましたが、プロジェクトごとに条件が異なる中で、標準的な進行フレームや判断基準の整備には課題を感じていました。そうした中、後藤さんには弊社の現状や目指す方向性を丁寧に汲み取りながら、型に押し込むのではなく、あくまで「現場で使える実践的な支援」をしてくださいました。
特に、導入プロジェクト全体の見取り図を整理するテンプレートや、起案・進行の際に活用できる資料フォーマット、関係者を巻き込むためのステップ設計など、業務の合間でもすぐに活用できるツール群は、社内における認識の共通化や属人性の低減に非常に役立ちました。
また、形式的な手順だけでなく、「なぜ今これをやるのか」「どの視点で考えるとよいのか」といった思考の軸をご提示いただいて、この対話を通じて、導入コンサルティング(インプリメンテーション)としての課題だけでなく、組織全体のオペレーション設計や人材育成に関する視点も深まり、非常に有意義な振り返りとなりました。
限られた期間ではありましたが、私たちが目指す「お客様のことを深く理解する再現性あるプロジェクト推進体制」への第一歩を踏み出すことができたと感じています。今後もこの経験を基盤に、自社としての推進力をさらに高めていきたいと思います。
現場の実情に即したご支援を柔軟かつ丁寧に提供してくださった後藤さんに、心より感謝申し上げます。
この記事の著者

プロジェクト進行支援家
後藤洋平
1982年生まれ、東京大学工学部システム創成学科卒。
ものづくり、新規事業開発、組織開発、デジタル開発等、横断的な経験をもとに、何を・どこまで・どうやって実現するかが定めづらい、未知なる取り組みの進行手法を考える「プロジェクト工学」の構築に取り組んでいます。
著書に「予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)」「”プロジェクト会議” 成功の技法(翔泳社)」等。
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