プロジェクトの企画構想に、輝きを取り戻すための「視点」と「問い」

この記事について

着目する問題:
既視感のあるプロジェクト構想の「見直し」

 ワクワクするような画期的な企画を発案したつもりなのに、進めていくうちに、どこかで見たことがあるような、陳腐なものに見えてくる。メディアでは華々しい成功譚がいくつも語られてるのに、自分のプロジェクトは全然そうならなくて、悔しい。そんな思いをしたことはありませんか。

 第一に申し上げたいのは、もしそう思ったとしても、落ち込むことはありません、ということです。誰も大きな声ではいいませんが、世の中のプロジェクトワーカーのほとんどは、同じ悩みを悩んでいます。あなただけではありません。

 第二に申し上げたいのは、その悩みは、プロジェクトの終着点ではなく、出発点である、ということです。

 適切に見直し、改善点を見極めれば、再びワクワクする企画に蘇ります。

陳腐化した構想は、6つの観点で見直す

 まず、ご理解いただきたいのは、プロジェクト構想とはそもそも必ず、以下の構文で構想される、ということです。

 そして、陳腐化が起きている場合、たいてい、以下のような具合になっています。

 冷静に考えると、誰だって「それじゃだめだ」と思うような話ですが、いざ上司や顧客の前に立ち、仕事として綺麗な資料を作り、プレゼンしようとすると、なぜか、人は、ついこうした方向に、フラフラと引き寄せられてしまう習性があります。

 「アジャイルにやろう」「とにかく、まず動くのが大事」「とりあえず、アクションしないと始まらない」と、闇雲に動き回ってしまうのも、こうしたエアポケットに捕まってしまう代表的なパターンですので、ご注意ください。

プロジェクト構想の黄金律

 基本的に、どんなプロジェクトも、構想がダメなうちは、絶対に、うまくいきません。逆にいえば、構想がピタッと決まれば、その時点でプロジェクトは成就したも同然です。では、これらの6つの要素に、どのような関係性があるとよいでしょうか。

考 えるコツは、「目的」を中心に置いて、隣接する各要素とのバランスを考える、ということです。

 残念ながら、この黄金律は、崩れることが宿命です。よくよく考えて、しっかりと構想を立てなければ、あるべき構想にはなりません。

ポイントは、各要素が互いに影響をしあう、ということです。

ですから、絶対にこの順番で考えたらうまくいく、というものではなく、各要素の変数を入れ替え入れ替えしながら、全体のバランスや整合性が取れるように工夫しなければなりません。

よく、「プロジェクトの企画は、目的から決めよう!」という指南を見かけますが、それでうまくいくとは限りませんので、その点は、ご注意ください。

立て直すための、問いの例

 各要素の中身をブラッシュアップするためには、問いを投げかけることもおすすめです。

 例えば以下の表は、目的P、関係者S、資源R、目標T、手段M、果実Fの、各要素の内容そのものが適切かを考える場合の問いです。

項目具体化キーワード問いの例
目的P意義 テーマ
狙い 動機
それは、本当に、必要か
誰がどこで、どう困っているのか
一次情報を確認したか
関係者S受益者 協力者
出資者 諸侯
なぜ、欲しているのか
そこに、愛はあるか
誰のためか
資源R資金 時間
スキル 知識
前もって絶対に必要か
動きながら獲得できるか
得るためにはどうするか
目標T成果 成果物具体的にはどういうものか
コンセプトは?
本当にそれでよいか
手段M技術 考え方
フレームワーク
その手段を、熟知しているか
酸いも甘いも噛み分けたか
自家薬籠中になっているか
果実F機能 効果
利益 価値
自利、利他ともに大事にできるか
我利我利亡者になっていないか
逆効果やデメリットは考えたか

 どんなプロジェクトも、構想がダメだと、絶対に、形になりません。進捗が悪い、とか、どうも話がうまく噛み合わない、ということがあった場合には、かならず、構想のどこかに崩れが発生しています。

 立て直しには、問いかけること、問題提起が一番です。ぜひ、ご参考ください。


この記事の著者

後藤洋平,ポートレート

プロジェクト進行支援家
後藤洋平

1982年生まれ、東京大学工学部システム創成学科卒。

ものづくり、新規事業開発、組織開発、デジタル開発等、横断的な経験をもとに、何を・どこまで・どうやって実現するかが定めづらい、未知なる取り組みの進行手法を考える「プロジェクト工学」の構築に取り組んでいます。
著書に「予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)」「”プロジェクト会議” 成功の技法(翔泳社)」等。

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